第10章 冬、めぐる狐日和のなかで
近くにある気配が動いたのを感じて、私達は其方に視線を向ける。
「すまないね。私はまた………貴女に迷惑をかけてしまった様だ。」
気がついた英尚おじいちゃんが静かに呟いた声に、私はゆっくり首を振る。
「そんなことなんて無いです。私がしたくて今ここに居るんですから。」
安心してほしくて言葉を紡いだあと、石田さんを紹介する。
「石田雨竜と言います。」
「困った時に、よく助けてくれるんです。優しい方なんですよ。」
眼鏡をなおしながらぽつりぽつりと「そんなことないんだけどな……」と、すごく小さく呟きが聞こえてきたけれど。
私にとっては、そんな事あるのだこれが。
だから変に否定をしてほしくなくて、にこにこと事実を口にする。
「はじめまして。貴方も、私を助けてくれるのかい?いろいろ面倒をかけてしまうかもしれないんだ。それでも…………?」
「はい。
英尚さんがお嫌でなければいいのですが、手伝わせてください。」
挨拶の後は、躊躇いがちに溢したおじいちゃんに真剣な言葉で、まっすぐな瞳で、石田さんは答えた。
「…………ありがとう。よろしく頼むよ。」
少しの間があって、やがて安心したようなおじいちゃんの顔が見れた私も、同じようにふっと肩の力が抜けた。
今度は私が、おじいちゃんに伝えなければ。