第10章 冬、めぐる狐日和のなかで
「じゃあ、爺さんの事以外には困ってないってことだな」
「そうなりますね。今は早く願いをきいて、魂葬出来るのが一番です。
約束………しましたから。」
「そっか。うん、なら私達も手伝うよ!」
「え……………?で、でも!」
「大丈夫だ、石津。放課後の1時間だけってみんなで決めてきたんだ。無理はしないし、勉強の支障にもならない。」
「でも石津さんだけに負担をかけることもしたくないんだ。」
みなさんの言葉を聞いて有難く思う気持ちと、迷う気持ちが心に湧いた。
いいんだろうか。
確かにみなさんが手伝ってくれる方が、おじいちゃんの願いを知る事に早くたどり着ける。
約束を果たす上でも、その方がいいのは私にだってわかるから。
でも、みなさんにとっても今は大事な時期だと言っていた。
あーでもないこーでもないと、考えていた私がいけなかったらしい。
「…………………よっし、手伝いで決まりな」
「え?!私まだっ!」
「答えるのが遅いのが悪いんだろ?
んじゃ、俺は先に行くぞ。」
話は済んだなと腰を上げる黒崎さんに、わたわたと慌てる私は思わずみなさんを見る。
ああなったら仕方ないからと顔に書いてあって、肩をすくめて笑う姿が目に入る。
「ありがとうございます、黒崎さん!」
用事があるからと先に帰る黒崎さんに、私は慌てて声をかけたんだ。
「俺だけじゃねぇだろ」
それからしばらくして、茶渡さんも織姫さんも帰路について行ったのだが。
「僕はもう少し居ても大丈夫かな?英尚さんとも出来るならお話してみたいんだ。」
「……………はい。もちろんです」
内心、どきりと緊張はしたけれど断る理由もなくて。
石田さんと、おじいちゃんが目覚めるまで昼下がりの河川敷で過ごすことになる。