第10章 冬、めぐる狐日和のなかで
「…………ん?」
英尚おじいちゃんが休眠してから、しばらくの後。
ノートに書き出したおじいちゃんの夢の話を教科書に記された近代史を頼りに、私なりにまとめていた。
ひと息つこうと鐵斎さんお手製のサンドイッチを食べている時に、耳が音を拾ったのだ。
遠くから呼ばれたような………気がして。
彷徨った視線は、賑やかな一団を見つけるのだが、それに私は驚くばかりだった。
慌てて、サンドイッチは口に押し込んだ。
「こんにちは石津さん!」
「織姫さん………黒崎さん達までっ。
どうしたんですか?!」
「ルキアに頼まれたレコーダー渡しに来たんだ。まだソウルソサエティから戻れないみたいなんだとさ。」
黒崎さんや織姫さんの元気な声の後には、茶渡さんや石田さんの姿もあって、本当にみなさんできてくれたみたいだ。
「みんなで話してたんだが、久しぶりに石津の顔が見たかったし、近況も聞きたかったんだ。」
「そうでしたか。その……………そう言ってくださってありがたい限りで。き、恐縮です。」
虚退治の合間に登校はしていたのだが、英尚おじいちゃんに会ってからは彼の動向が気になって、休みがちな時が多かったのだ。
授業を録音したボイスレコーダーは、考査が近づくことで焦った、私の苦肉の策でもある。
茶渡さんの言葉に、嬉しいやら気恥ずかしいやらで、上手く言葉が選べなかった。
「無理とかさせてしまっているのは僕たちの方だからね。霊圧の損傷は良くなっているのかい?」
石田さんの気遣う言葉と視線を受けた私は、ありのままの現状を言葉にした。
気持ちは確かにありがたいと思いつつも、大丈夫だと伝えたかったから。
「以前に比べるとだいぶ良くなりました。
打てる鬼道の数の上限も上がりましたし、風司の借り受けた能力のおかげで、死神化無しの魏骸戦闘も出来ています。
無理はして無いですから、安心してください」
そう。
皆さんに、心配をかけたくなくて口にした。
その後、私は英尚おじいちゃんの事も含めて近況を皆さんに話した。