第10章 冬、めぐる狐日和のなかで
授業の感想を言葉にするなら、“変わってる“ってのがピッタリだと思う。
残り4回の授業で物を作って、各自レポート提出。
形として残るものでも、食べ物みたいに失せ物でも可。
条件は--自分自身でも友達家族でもいい。とにかく、大事に思う人に作って渡すこと。
受験だなんだと忙しい中での息抜きと、きっと未成年の今だから作れる物だと。
イヤイヤでもいい。
自分と大事に思う存在に、改めて心を向ける良い機会になる筈だと。
今だから、やるんだそうだ。
「どうしようって考えちゃったよ……」
「……………僕も」
授業が終わって教室までの帰り道。
壮大かつ難解な内容が、僕や井上さんの頭を埋め尽くしていた。
難しいし、すぐに答えが出て取り掛かれる人はいいかもしれない。
でも、“大事に思う人“ってキーワードが問題なんだ。
頭によぎった残像は、消し去って溜息をつく。
ちらりと視線を井上さんに向けると、む〜っとこれまた難しい顔をしていて、やはり考え事に夢中だ。
石津さんにも説明を兼ねて、こればかりは話さないといけないと、僕は思った。
「とりあえず授業は置いておくとして、これで帰れるから、プチサプライズの準備しなくちゃ!」
「気になっていたけど、どうするんだい?」
「実はね……………」
悩み顔から一変、にこにこと笑う井上さんに連れられて、僕はサプライズの内容を知ることになる。