第2章 戸惑いこころ
生徒会の雑務を終えた僕は昇降口で困っていた。まさかあると思い込んでいた折り畳みの傘が鞄に無いとは……。
きっと玄関の靴箱あたりに置いてあるんだろうと考えても、手元には何もない。
風は治まってきても雨足は結構な量。
仕方ない、走って帰ろう
そう思った時ーー。
「石田さん?」
声の方へ振り向けば、傘を持った彼女がいた。
「………図書室にいるのかと思ったよ。」
「いたんですが、先生に帰った方がいいって言われたんです。」
視線を逸らした僕に、そう言った彼女は
ははっと乾いた笑みを見せた。
コツコツとローファーの音を鳴らしながら
近くにきた彼女は、じっと此方をみる。
居た堪れずに眼鏡を治す。
「もしかして、傘がないんですか?」
「…………残念ながらね。」
その言葉の後は無言になる。
相変わらず此方をみてくる彼女にどうしたものかと思っていると、彼女は自分の傘を僕に差し出した。
「………なんだい?」
「この間のお礼です、使ってください。」
「君が濡れるだろう?大きい傘なんだから自分で使った方がいい。
だいたい、礼はいいと言ったよね?」
そう言った僕に鞄を開けた彼女が取り出したのは、折り畳み傘。
「入れっぱなしにしたのが良かったみたいでこれがあります。それに私、少し濡れても気になりませんから。」
なんでもない事の様な言葉や彼女の表情を
僕は見ることが出来ずに逸らした。
また 重なる
どうして
『ありがとうございます石田さん。
大事に使いますね』
どうして
『私は雨嫌いじゃないです。
上がった後の空がきれいなんですよ。』
どうして
『いっちゃん、みて!虹だよ!』
どうして 重なるんだ
頭の中の渦巻いた何かが、ぷつんと糸を切った音がした。