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BLEACH 叶わない願いをそれでも願う

第10章 冬、めぐる狐日和のなかで




「それ、どうしたの井上さん?」


「石津さんの頼まれ物を、黒崎くんから預かったんだ。選択科目違うからって。」




教室から家庭科室へと移動を済ませた僕は、手近の席に座っていた。







始業前僅かな時間で来た井上さんが、埋まりつつある席に座りあぐねている姿が目についた事と、声をかけないのも変な気がして呼びかけて--暫く。









テーブルの上には、気になっていたボイスレコーダー。

普段そんな物を持ち歩く人なんていないから、不思議だったんだ。



欠席である石津さんが頼んだ………と言う事は、授業を記録してほしいんだろう。



僕等に控える入試は彼女に関わりがないが、間近に迫りつつある期末考査は、そうもいかないはずだ。




朽木さんや石津さんには本当に申し訳ないと思っていても、彼女達のおかげで大事な時期を過ごせているのは事実で。





けれどそれがあっても、心は罪悪感で重たくなる。





当然無理をさせているだろう。
僕で力になれる事はないだろうかと考えても、石津さん自身が必ず対処をしている為に結局のところ出来ずに時だけが過ぎていた。



その実、中身の濃さを抜きにしてみれば、彼女は黒崎よりも戦闘経験はあるだろう。


鬼道と体術も駆使することを目で見て知っているから、万全の状態ならばなんの心配も無い人なんだ。


ただ気掛かりは、石津さんの霊圧の損傷だ。








「私も気になるから、黒崎くんと届けに行くんだ。石田くんも一緒に行こう!」

「…………え?」




悶々と考えを巡らせていた中で、井上さんの声が耳に届いた。







「難しい顔してたけど、石津さんのこと考えてるんだろうなって。

会って話せば皆も息抜きになるし、安心出来るよ」






微笑んでくれた井上さんに、長い付き合い故にバレていた内心が……図星だったから。

気恥ずかしさで、返答が遅れてしまった。







「ありがとう、井上さん。」



そうしている内に、授業の始まる予鈴が響いた。



















「たつきちゃんと話してたんだけど、ちょっとしたサプライズを考えたから、石田くんも是非!」

「うん…………うん? 」
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