第10章 冬、めぐる狐日和のなかで
昼休みを知らせる予鈴が鳴り響く教室で、朝手渡されたレコーダーをOFFにする。
一限目から授業を録りっぱなしだから、かなりの時間になるだろう。
ふぅっと、溜息が出た。
「ほんと………真面目すぎるよな」
石津がそうゆう奴だって事は、この数ヶ月でわかってきた……けど。
あまりにも周りを、俺たちを頼る事が少ない--とゆうか、ほぼ無い気がする。
それだけでも、優秀なのは理解もしているが納得は出来なくて。
今だって、アイツは本調子でもないのにきっちり虚退治は済ませたらしい。
代行証のざわつきが消えたのを感じた。
いくら大事な試験がすぐに待ち構えているとはいえ、この二月間は一度も死神化していない………気がする。
事情があるから気にするなと言われれば、そうなんだが。
どうにも、こう。 申し訳なくなる。
何か自分にも出来ないかと過っても、それを石津からは望まれていないとしたら、意味は無い。
わかってはいるんだ。
でも。
気持ちの堂々巡りだ、まったく。
結局、今出来る事は手の中に収まるほど小さな事しかないらしい。
「…………………」
二度目の溜息を掻き消したのは、賑やかな声だった。
「一護、待っててくれてありがとう」
「おっ石津さんの預かり物やってんだな、お疲れさん」
「大した事じゃねーけどな」
「一護はそう思っても、きっと石津さんは違うよ。大丈夫」
「頼ったって事は、そうゆうことだしな」
「…………だな」
啓吾が水色と一緒にやってきた事と、二人がかけてくれた言葉で、気持ちを切り替えることが出来た。
午後からは短縮授業で、俺たちはあと一限終われば下校になる。
最後は、確か選択科目だったか。
俺は石津と同じじゃないから、誰かに頼まないといけない。
まあ、声を掛けてみるか。
チャドも加わって再び賑やかとなる俺の机に集まったみんなに、話を始めた。