第10章 冬、めぐる狐日和のなかで
ふっと意識が戻ると、河川敷の草の上に横たわっていた。
額に違和感があって触れれば濡れたハンカチが長細く畳まれていて、知らず気を失っていたのだと理解する。
「よかった、目が覚めたんですね!」
「とんだ迷惑をかけてしまったようだね。申し訳ない……」
「いいんですよ。でも…そのっ大丈夫なんですか?」
私を案じてくれているのが、声色から表情からわかったから、安心させる意味で夢の出来事を話そうと口を開いた。
「そんなことがあったんですね。」
うーむ……と思案顔の彼女は、それでも、どこかほっとしたような顔をむけてくれた。
「英尚おじいちゃんが思っている以上に心労が過度にかかったんだと思います。
どうゆう理屈かはわからなくても、心に揺らぎがあったんです。
今はただ、体を休めてください。」
「ありがとう………」
申し訳ない気持ちがあるが、彼女の言う通り強烈な眠気に見舞われたが故に、そう言葉にするだけで限界だった。
「今日は、も…………大丈夫だから、石津さんも戻って………れ」
「私は此処にいますよ。大丈夫です。
次に英尚おじいちゃんが目覚めるまでの、ほんの少しの時間で、まとめたい事も出来ましたから。」
「……………」
何か、言葉を返してあげたかった。
それすらままならないまま、再び私は眠りに落ちた。