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BLEACH 叶わない願いをそれでも願う

第10章 冬、めぐる狐日和のなかで




「……………えっ…………」


それが訪れたのは、突然で。

長い結い紐が千切れてしまったのは。


壊れてしまった事実が
思った以上に自分の中で動揺となって波立っていて。





なんなら 泣いてすらいたはずだ。













手の中にある結い紐の
直しようがないのを見る度
諦めなきゃと思う気持ちと
失くしたくない気持ちがせめぎ合っている。


余計に。
涙は止まってはくれなくて。



子供みたいで恥ずかしいけれど
私にとっては本当に大切なものだから。











"………もう駄目なのかな"





 































"ひとつだったものが
もうひとつ増えたって考えてみるのはどうかな。

御守りがふたつ
うん  きっと心強いね"


































涙で滲んだ先には  ぼんやりとした輪郭



知らない声
見えない誰か






だけど感じたのは あたたかい空気と
ひどく懐かしいと思う気持ちで。



どうして そんな気持ちが心に浮かんだのか。
そのことに戸惑いで動けずにいた私は、聴こえた声にそれでも応えなければと、ぐっと涙を拭った。











"大切にしてくれて  ありがとう"










耳が拾った言葉の後には誰もいなかった





























「今思えば、白昼夢でもみていたんだって思うんです」

思い出してみるとぼんやりしていたし、心配した顔で兄妹達が私を覗きこんでいたんだ。


それでも、もし叶うなら--。



「でも逢えるなら、ありがとうって言葉を聞いたからこそ。
私もちゃんと感謝を伝えたいんです。
………実際には難しいでしょうけど」




「そうか………。きっと逢えるよ。
ありきたりの言葉にはなるが、願えば叶うことがあるんだ。
話してくれてありがとう、石津さん。

君の話を踏まえて、思い出してみるとしよう」


優しい眼差しや思いを感じながら、ゆっくりと時間はすぎていった。

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