• テキストサイズ

BLEACH 叶わない願いをそれでも願う

第10章 冬、めぐる狐日和のなかで




「おはようございます!」


「…………本当に早いな。たまげたよ」


「すいません。でも今日は一日英尚おじいちゃんと過ごす日にしました!」

「ありがとうな。」



いつも通り、鞄には筆記用具やお弁当を入れて--いつもとは違う場所に足を運んでいた。



空気は冷たさを含み、けれど日差しが柔らかい冬晴れの河川敷。



私は、英尚おじいちゃんの願いを知ることを目的としている。




それにはまず、彼の人と成りを知るのが一番だと思うから。





突然の提案にも関わらず、了承してくださったのは有難い。












「それじゃあ聞いていきますから、分かる範囲内で答えてくださいね」


「お手柔らかに頼むよ。」








こうして、朝の時間は過ぎていく。



















「待たなきゃいけないって以前言っていましたよね。
大事な事だとも。それは…………人であったり物だと思うんですが、何が浮かびますか?」





「あと、"私も"抜けてるところがあるって言っていましたから、そうゆう人に覚えがあるのかな………と思いまして」








「大事なもの…………人か………」





ぽつりと、けれど自身に問いかけている様な言葉だった。




私には見えない何かを、険しい瞳で凝視している。


私はこの人が出す答えを、待つことにする。








ひとつ。
目を閉じて。

ふたつ。
深呼吸をして。

みっつ。
静かに言葉は紡がれた。













「なあ、実穂さん。
アンタさんには………逢いたいと願う人はいるかい」





私の目をただ真っ直ぐに見つめて、英尚おじいちゃんはつぶやいた。




あまりにも真剣で、少しだけたじろいでしまいそうになる。
けれど、嫌な気は全くない。



「今まで誰にも言った事はないんですが、それでよければ聞いてくださいますか?」



「もちろん。ちゃんと聞くとも。
だから話してくれると嬉しい」


「……わかりました」





するりと抜ける冬風の中、私は英尚おじいちゃんに水筒に詰めた温かい緑茶を手渡して、ゆっくりと話し出した。



/ 430ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp