第10章 冬、めぐる狐日和のなかで
「帰るって言ってるのに引き留めてわるかったね。」
「大丈夫ですよ。
そうだ、おじいちゃんに渡したいものが………………っ」
「何かあったのかい?そっぽ向いて固まって」
「すいません、その、忘れてしまいました」
「そうかい?
私は気にしないが、意外と忘れっぽいんだなぁ貴女も」
「……………そうですね」
明日にまた顔を見に来ますと伝えて、私は河川敷をあとにする。
内心は、焦りと困惑に満ちていて--貼り付けた笑顔は、それを隠すのに必死だったのだけれど。
「どうして……………?」
ドクリドクリと、早く響く心音が思考の邪魔をする。
とにかく今は、約束通りに戻らなくては。
止まっていた脚を無理にでも動かして、帰路を急いだ。
浦原さんや朽木副隊長には、帰宅の報告を済ませ誰もいない自室で、落ち着かせるためにも頭の中を整理する。
霊力で創れていた、守る為の鈴や結い紐がカタチを成さずに霧散した事。
いくら霊圧の損傷があるからとはいえ、こんな事は初めてだった。
それ故の、焦りと困惑。