第10章 冬、めぐる狐日和のなかで
「何か変わったことはないですか?」
「頭がボーっとして、変な、よく分からん気分になるんだ。かと思ったら眠くなってしまって……死んでも年寄りはそのまんまってことなんだろうね」
「冬場でもこの場は日当たりいいから、気持ちよくなっちゃいますもんね。」
私たちはこうして他愛のない会話をして、過ごす。
胸の孔は、鎖に引っ張られて少し開いてはいるがそれでも。
特に異常はなく、無事に済んでよかった。
……………今日に限っては。
鎖の本数が一本減っている事、意識の混濁。
多少の差異はあれど、虚へと堕ちていく過程がまたひとつ進んでしまった。
止めたくても、それは出来ない。
英尚お爺ちゃんが縛られている理由がわかって、心安らかにソウルソサエティに行けるのが本当は一番なんだ。
でも、あの様子ではーー遠くないうちに虚となり、彼の意思を知る事は難しい。
願わくば、解決して笑って向こうに行ってほしいから。
だから会話を通して、理由に繋がるものを見つけたい。
「ひとつ聞いてはくれないか……」
「なんですか?」
「私は、そのうち化物にでもなるんだろうね?
白塗りの仮面付けて……馬鹿でかい体のものに」
「…………!」
「何度か見た事があるんだが…………そうか、私もなるんだなぁ」
「どうして、そう思うんですか?」
「目は口ほどに物を言う。
顔見たらわかる。嘘はつけなさそうな、素直な人のようだから」
ふっと笑ったおじいちゃんの顔を見て、私は思わず口を噤んでしまった。
これじゃあ、はいそうですと言っているのと同じじゃないか。