第9章 約束したから
ばったりと出会した茶渡さんは、私の姿に驚きつつもその場を去ることなく隣に立って居てくれた。
「すいません……」
「流石に泣いてるのを見て、放っておけるタチじゃなくてな。
それに謝る必要もない」
申し訳なくてした謝罪は、苦笑いの茶渡さんの優しい言葉で返されてしまう。
何か言葉にしたいのに、口も心も重くて動かない。
しばらく続いた静かさは、茶渡さんの言葉によって終わりを告げる。
「無理に詮索をする気はないんだ。
ただ…人が泣くのは怪我をしてるか、心に痛いところがあるかのどちらかだと聞いたことがあるんだが、その、大丈夫か………。」
ぎこちなくも、言葉にしてくださった優しさにありがたいと思いつつ、ポツリと私はこぼす。
「私の……心の弱さの問題なんです。だから大丈夫ですよ。
むしろ自分が駄目だなぁって思ってます」
気持ちを制御出来ずに、何も出来なくなると不甲斐なさが口をつく。
「どうして駄目なんだ?」
「………………………えっ?」
だから、茶渡さんの言葉で思考は止まる。
「俺も悩んだり辛いと感じることはあるし、現に自分の力不足に悔やんだりしたことなんて数知れない。
駄目だと思う気持ちを受け入れて飲み込もうとしてる石津の心は、弱くはないし、すごいと思うけどな。
その過程に、例えば涙をながしたとしても俺はいいと思う。」
考えもしなかった驚きや気付かされた思いに、私はさらに動けなくなる。
悩むことは悪いことではないと。
以前ルキアさんや織姫さんにも言ってもらった。
今はまだ、誰にも言えない気持ちをしまうことで手一杯な状態。
でも。
それでも………いいんだ。
少しだけ、前向きになれた心。
「最後は石津自身が答えを出す日まで、いくらでも悩めばいい。」
「……はい。」