第9章 約束したから
「まあ、俺も。
嫌なことっつーか、泣かせることはしたくないな。結構……………堪えるしよ」
不意に表情が柔らかくなった黒崎が、ぽつりとこぼした。
人か、はたまた思いか。
去来するものがある様で、その表情とは裏腹に、言葉尻は弱くなって耳に届く。
黒崎なりに考えて、話をしてくれているのが分かったから、そのまま聞いていた。
護り、闘い続けたが故にーー彼にしか知り得ない思い。
泣かせたくない存在がいるのだろうと、それはすごく自然に納得出来た。
それと同じとは言えないまでも、僕にだって譲れないものはあるから。
石津さんを疵つけることは、僕自身がしたくない事。
それは本心だ。
例え、その先にある"思い"が誰に知れなくとも。
黒崎と分かれたのは、それからしばらくしてから。
わずかでもと、自販機の暖かいコーヒーを礼代わりに無理やり持たせながら。