第9章 約束したから
しばらく泣いて、ふーっとゆっくり息を吐く。
気持ちも、だいぶ落ち着いてきたから。
流れる涙をしっかりと拭って、ツンと痛む鼻もそのままに。
寝転んだ体を起こして、気持ちを切り替える為にも、橋の塔から去ることにした。
「それが、石津さんに話したことだ。」
黒崎と会って、話してからーーかれこれ1時間くらいは経っていた。
僕が友人の話を石津さんにしたことを、掻い摘みつつも語った。
その間、黒崎はただ静かに聞いていたのだが。
「待てよ石田。石津は…………知ってんのか」
「亡くなった友人と彼女が同一人物かもしれないって?
…………口が裂けても言えないよ。
もともと言うつもりもないしね。」
「石津さんには迷惑や嫌なことをしてしまったから、これ以上真実でもない事を言ったところで余計に彼女を傷つけるだけだ。
そんなこと、僕がしたくないんだよ。」
そうだ。
そんな酷いこと……出来る訳ない。
“そうかもしれない"と言う--根拠も可能性の無い事だ。
あの時は、石津さんに泣き止んでほしくて話を中断したことを、今は良かったとすら思っているくらいだ。
彼女は知るはずもないけど、かけてくれた言葉で、僕は救われた気持ちになった。
だから、言わない。
会話が途切れて、過った気持ちもそのままにしているとーー変な視線が、なんだ?
「………言いたくねぇなら無理には聞かないつもりが、お前からそんなに言葉が出てきて…………」
「なんだい?」
「…………ビックリしてんだよ」
しまった。
また僕は余計なことをっ………。
気恥ずかしくなって、いけ好かないニヤニヤ顔に言い返そうとした時、不意に黒崎の言葉が聞こえた。
「前にも言ったけど、お前がそんな風に石津の事を考えてやれるようになれたんなら、俺は良かったと思うけどな。
いっつも余裕ない顔して、変だったんだぜ?」
「…………………………………」
事実だからこそ、言葉に詰まってしまう。