第9章 約束したから
「悪い、だいぶ手荒にしちまっただろ。」
「え?いや、そんなこと………」
なんでと言いたげな顔をした主に、俺は溜息混じりにこぼした。
「あるだろ。
実際俺の"此処"は、キツかったんだしよ。」
とん、と己の胸に指を置いて応える。
「俺がそうなら、主だって同じにキツかったはずだぜ。
怯えて喪失しかけて。
戻ったからよかったが、心にだって傷はつく。
………十分手荒だろ。」
ぶっきらぼうに紡いだ言葉とは裏腹に、事実だからと申し訳なく思う気持ちもあったから。
本当なら、もっと違う言葉を選んだってよかったのかもしれない。
けれど、自分はいったい何者かと迷い恐怖している心には、その己自身と否が応でも向き合った方が早いと思ったのだ。
何を決めてーー何をしてきたか。
それを思い出し、また前を向けることができたならば主は必ず、歩み出すと信じていた。
「ありがとう、風司。
後のことは、自分の心で決めるから」
数時間前とは違い、だいぶマシになった顔を見て内心安堵している自分がいる。
俺に譲れない思いがあるように、主だけの思いがあるのもわかるから。
「………そうしてくれ」
その一言で、俺は主の背中を押すさ。
「風司が歯が浮くような事言うなんて、意外だったね」
「……………………………うるせ」