第9章 約束したから
瞳を開けると、並んだ寝台や薬の香りが鼻をかすめて、休ませてもらっている部屋へと戻ってきたのだと安堵する。
かさり……と音がして視線を寄せると、一枚の折り畳まれた紙がある。
不思議に思ってひらいてみてから--驚いた。
無闇に己の武器を手放すな。
だが、助太刀には感謝する。
未熟だと記された厳しい文と、礼意の記された優しい文とが連なっていたのだ。
どう言葉にしたらいいのか。
でも。
この一切れの紙で、私の心は報われた気持ちになれた。
あの人に危害が及ばぬようにとただその一心で放った刀。
烏滸がましい上に、正に正論だ。
武器が無くては何も出来ないのだから。
それでも。
あんな暴投が、助太刀になった。
あまつさえ感謝までされるなんて。
驚きと僅かな嬉しさが、ごちゃごちゃしていた。
今の私には、十分過ぎるものだ。
「いい時にきたね、おかえり」
「………た、ただいまです」
声の方へと視線を向けると、急須を片手に男性が立っていた。
なんだか、そんな風に言葉をかわす事への気恥ずかしさがあったけれど、ぽそりと応える。
「無事に事が済んで安心したよ。あとはゆっくり身体を休めるといい。お茶も、とびきり美味しく出来上がったんだ。」
「はい。そうします。
助言もお茶もありがとうございました。
あの………お礼がしたいのですが」
「お礼かい?………ふむ。
君が君らしく進んだ先で今よりも成長した姿が見れたなら、それが一番になるかな。
良し悪しはあれど、何事も最初はある。
大事なのは、そこからどう行動するかだよ。」
笑顔を向けてくれたこの人は、どことなく雪子母さんを思わせる人で。
安心感が、胸を満たしていった。
でもきっと、それだけじゃない。
砕かれた夢は、破片となって痛みと一緒に私に気づかせてくれた。
自分に足らないチカラを。
己は勿論だが、手の中にあるーー共に錬磨し、共にあゆむ存在を信じる事を。
「…………ありがとう、ございます」