第9章 約束したから
淹れたてのお茶の香りが部屋の中に広がっている。
にこにこと笑みを浮かべながら手渡されるそれを、私はためらいながらも受け取り、ひとくち頂いてみた。
「おいしい………」
「それはなによりだ」
不安や焦りで波立っていた心が、お茶のおかげもあってほぐれていく感じがする。
顔に出ていたのだろう。
私の様子を見ていた男性は、より和かになっていて。
「場所はどうあれ、落ち着いて話すにはこれに限るよ。」
さて……と改めて私に向き合って事の顛末を話し始めてくれたのだった。
ここは、瀞霊廷東門・青流門(しょうりゅうもん)に近い第二十八救護詰所。
仲間は傷の程度はそれぞれだが無事であり、一番重症の私に至っては、治療継続中らしい。
「霊術院の治癒技術では、少し治しづらい頭部の怪我らしくてね。
明日にでも腕のいい人が来てくれる。
それまでは、短いながらも監督役さ」
「そうですか………みんな無事で、よかったです」
安心した、ものすごく。
重かった気持ちも少しだけ軽くなった。
手のなかの温もりを思い出して、ひとくちお茶を飲む。
皆の無事がわかって、でも、依然晴れない私の心。
「うーん…何かまだあるって顔だね。よかったら、話してみないかい?」
「でも、迷惑にはなりませんか」
「患者である君の心理負荷の軽減も、監督役の大事な務めだからね。」
見ず知らずの人に、複雑な思いをこぼしてもいいのかと葛藤があるが、優しい言葉に背中を押されて、結局私はぽつりぽつりと話し始めた。
頭の中に、虚との戦闘が浮かんでくる。
何度も斬り込んで、終いには弾かれてしまっていた私の斬魄刀。
結局擦り傷程度しか負わせられなかったのに。
現れた名前も知らないあの人は、それを虚から何の抵抗も無く斬り伏せてしまえるチカラがあった。
そして、瞬歩と体術を駆使しての速攻。
斬魄刀での攻撃は、あくまで必殺の決め手としていた。
学生の身分で、羽織を着ていた……おそらくは隊長と、チカラの違いを比べるべき相手にはなり得ないとしても。
信じられなくて。
ここまで………違うのかと。
気持ちが、打ちのめされているんだ。