第9章 約束したから
ふと目覚めて、重くぼんやりとしている頭のまま首を横に捻ってみた。
ここは………どこなんだろうか。
霊術院の医務室かとも思ったが、並び置かれた沢山の寝台をみるに、きっと違う。
それでも、微かに香る麻酔薬や清潔感のある雰囲気でどこかの医療機関なのだろう。
違和感を感じて触れた頭には包帯が巻かれているのを、そばにあった手鏡で確認する。
そして、手鏡が置かれていた丸盆の上には書置きと…………柄のついた金鈴が。
"目覚めたら鳴らすこと"
そんな一文が記されていた。
ますます不思議に思いながらも、いまの自分の状況や仲間達の安否を知りたい気持ちが勝って、私は金鈴をゆらしたのだった。
ほんの僅かの時間で、1人の男性がこれまた布を被せた丸盆をもって現れる。
「うん、目覚めはいいみたいで安心したよ。
体に不調は感じるかな?」
和かに話しかけてくれるその人とは対照に、私の心は不安な気持ちでいっぱいだった。
ぼんやりしていた頭が落ち着いてくると、どうして自分が怪我をしたのかが思い起こされてきたから。
現世実習での、虚との戦闘。
4人一組でいた仲間も私も、大怪我を負ったんだ。
だから、みんなの無事が気がかりで前のめりになりながら言葉を紡ごうとした。
「そんな事は今はいいです。
私と一緒にいた学生はっ…………」
かざされた右手。
その手一つで、私の焦りと勢いは削がれた。
「待て待て。君が知りたい事は、必ず教えると約束しよう。その前に、これだ。」
「…………これって」
「美味しいお茶さ!」
にかっと笑うその人とかざされた急須を前に、私はポカンと口を開ける他なかった。