第8章 鈴音の再会
「織姫、スマホ貸してみ!」
「え?はい、どうぞたつきちゃん」
たつきちゃんに何の疑いもなくスマホを手渡したことを、激しく後悔する事になるなんて……この時の私は夢にも思わない。
自分の恋心の一端を知られてしまった恥ずかしさから、頭を抱えていた。
ちらっと、実穂ちゃんを見てみる。
とーーオホンっと気を取り直すような咳払いが聞こえた。
「………すいません、織姫さんと黒崎さんが、そのっ……こ、恋仲だとは知らなくてですねっ」
モジモジした実穂ちゃんから、まさかの一言が飛び出したから、当然私は慌てて応えた。
「いや!いや、違うよ実穂ちゃん!
たしかにそうなったら、なんて思って無いこともないけど……違うの、本当‼︎」
「そう、なんですか……?」
「私がね、勝手に黒崎くんの事を………ずっと好きなだけなの」
「ひとりの人を思い続けるとは、私自身経験がなくて分かりませんが、その………辛くなったりはしないんですか?」
まさか、実穂ちゃんからそんな言葉を聞くとは思わなかったから、再びじっと見てしまった。
気遣ってくれている瞳がそこにはあって。
にこりと私は、笑ってみせる。