第8章 鈴音の再会
アパートに辿り着いて、諸々の寝る支度を済ませた。
勉強をしなければと思うのに、握ったペンはなかなか動かなくて。
理由なんて、はっきりしている。
石津さんの様子がーー少しだけ変だった事と、それを隠している事。
言いたくない事を無理に聞こうとは思わないけれど、商店までの帰りの様子を思うと……ただ疲れが溜まっているわけじゃ無さそうだった。
どこか辛そうな瞳が、気になったんだ。
本当なら無理をしないでほしい・頼ってほしいと、伝えたかった。
でも、僕らが無理を強いてしまっている以上、言える訳がないとも……思う。
それが悔しくて、やり切れなかった。
どこか戸惑って困った様な石津さんの表情を見て、そんな顔をさせたい訳じゃないと罪悪感すら抱いた。
だから代わりに、番号を渡した。
『何かあったら、遠慮しないでかけて。
そしたら必ず………っ………行くから』
その後に見れた、石津さんの笑顔。
それだけで、やって良かったと思えた。
「………………………………っ!」
今思い出しても、顔に熱が広がるのがわかる。
誰も見ていないが、掌で咄嗟にその熱を隠す。
我ながら恥ずかしい事を口にしてしまったけど、紛れもなく………本心だったから。
出来ることを、する。
力になる。
その想いだけは、揺るぎなく心にもって。
だけど今は、自分の事も確実にしていかなくてはならない。
ふぅ〜と深呼吸をして、落ち着いた気持ちの中でペンをノートと参考書に走らせた。
「そう言えば………………」
はたと、唐突に頭に浮かんだ事により手をスマホに伸ばすのは、それから1時間後の事。