第8章 鈴音の再会
「そうだ、石津さんに渡すものがあるんだよ」
さっきまでと違う、明るい声と一緒に石田さんから手渡されたもの。
「これは………?」
「僕の番号。ずいぶん前に黒崎にも教えたんだ。
何かあったら連絡しろってね。」
何故に今なんだろうと疑問が浮かぶが、石田さんが考え無しにこうゆう事はしないだろうと、思い至ったことで受け取る。
そう言えば、番号知らなかったなって気付いた心は置いておく。
「石津さんも何かあったら、遠慮しないでかけて。
そしたら必ず………っ………行くから」
「……!石田さん」
優しい瞳と言葉に、私は目が離せなくなった。
トクンーと小さく鳴った胸の音が、自分の耳にも届いた事で、今までごちゃごちゃしていた頭が静かになる。
「僕に出来ることは、したいんだ。……それだけだよ」
カチャリと眼鏡を直しながら、そんなことを早口で答えた石田さん。
「………ありがとう、ございます」
真っ直ぐ、彼の目を見て私も返事をする。
暗い思いが消えたわけじゃないけれど、見つめる先の石田さんの姿にほんの少しだけーー安心出来た。
だから二度、お礼を言おう。
彼の気遣いと、安心をくれた事に。
「ありがとうございます、石田さん」