第8章 鈴音の再会
「着いたよ、石津さん」
「……………あっ」
石田さんの言葉に顔を上げると、商店の前だった。
「すいません!気付かなくて……」
「朽木さんもだけど、石津さんも疲れてるんだよ。ここ一ヵ月半、僕達は虚退治を任せきりにしてしまっているから」
「もともと私達が請け負う任務なんです。ですから今の現状はあって然るべきだし、私にとっては霊力の損傷を治しながらチカラをつける、いい機会です」
石田さんの言葉に、当たり前の答えを私は返した。
本来なら、彼らがすべき事は普通の生活を営む事であって、虚退治ではない。
だからーー、大丈夫だと伝えたかったのだけれど。
「そう…………だね」
なんだろう。
私は、余計な気苦労をかけたくなくて、普通に話したくて言葉にしたのに。
どうして。
石田さんの瞳の中に、やるせない色が滲んでいる様に見えた。
僅かな戸惑いが、心の中を波紋が広がるみたいに駆けていく。
胸が、少し苦しく感じた。