第8章 鈴音の再会
「お二人ともご苦労様でした。
晩ごはんは鍋っスよ!ささ、上がってください」
和かに出迎えてくれる浦原さんに、気になった事を聞いてみた。
「ただいま戻りました。あの、土間にあった靴は………?」
「黒崎さん達が来てますよ。
何でも、仕方ないとは言え任せっぱなしは出来ない上に、様子が聞きたいんだそうです」
「そうなのか?
気持ちが分からなくもないが、今は学業でとても大事な時期なのだろう。だからこそ私達が出向いているのだ」
「もちろん分かってはいらっしゃるんですが、それでも……みたいっス」
苦笑い混じりにそう答えた浦原さんに、やれやれと先を歩くルキアさん。
黒崎さんにチャドさん、井上さんに石田さん。
視線の先には、いつものメンバーが茶の間に揃っていて、机の上に広げてある勉強道具を片付けているところだった。
どやどやと夕ご飯の支度も始まったのか、ジン太くんや雨ちゃんが食器や鍋を運ぶ姿も見える。
変わらない生活の風景と皆さんの姿。
だけど私は、そこへと足を向けれなかった。
いつもならーー笑って話しかけて、何の躊躇いも無く入れたはずだけど、暖かい雰囲気と、今の自分の心中との温度差が違いすぎて。
そしてどうしても、寺での一件が頭から離れずに心に重苦しさがあったのだ。
ルキアさんに、着替えを済ませたいと断りをいれた私は、自室である客間へと帰る。
「おかえりなさい、実穂様」
「ただいまモネ。一緒に連れてけなくてごめんね」
「いいんです、今は怪我を癒さなくては貴女様の役には立ちませんから!」
「………そうだね」
ルキアさんとモネと共に虚退治をしていたのだが、子供の霊を守る際にモネは脚を負傷してしまっている。
だから傷が癒えるまでは、風司とお留守番だ。
「皆様が無事に戻られて、私は嬉しいですよ!」
ありがとうの気持ちを込めて、彼女に微笑む。
「モネ、先に浦原さん達のところに行っていてくれる?」
「わかりました」
子羊のぬいぐるみ姿のモネは、一つ返事で部屋を後にしてくれた。