第8章 鈴音の再会
「………い、おい、実穂‼︎」
「はい?!…………はい?」
「はい⁈ではない、たわけ!
どうしたのだ、さっきから。
声を掛けても上の空、呆けておって!」
「いえ、何でも……「なくない顔をしているから、聞いているのだぞ私は。」
心配する思いと、ボーッとしていた私にちょっとした怒りが混じった視線を浴びせる、朽木副隊長が前に立つ。
虚退治を済ませて合流した私達は帰路についたが、気付けば浦原商店がある通りの近くまで戻っていたようだ。
先程の寺での出来事が頭から離れなくて、考えていた。
がーーその事が災いして、黙り続けた私に目の前の上官の堪忍袋の尾が切れたらしい。
「…………上の空、でしたね私」
「ああ」
「ご心配をおかけして、すいません」
「ああ」
「…………………」
「…………………ハァ。無理に聞くつもりは無い。
だが、話したくなったら時間は必ずつくるよ」
「ありがとう、ございます。
ごちゃごちゃしたものが落ち着いたら、必ず」
しばらくの無言の見つめ合いから一転、私の口が割れないと判断したのか、仕方がないと肩をすくめてルキアさんはそう言ってくれた。
本当に、私は人に恵まれていると心から思う。
今はーーぐるぐると頭の中が渦巻いて、何も話せそうにないのだから。
「早く店まで戻るぞ。
私もお前も、連日指令のたびに動いてばかりなのだ。休まねば体が持たんからな」
「……はいっ!」
気持ちを切り替える為に、私はいつもより声を張って応えた。
目の前は、浦原商店。
ガラリと木戸を開けて、あたたかい光が見える店内へと私達はたどり着いた。