第8章 鈴音の再会
一人になった私は、男性が去った誰もいない道を見つめる。
彼に言ったことに、嘘はない。
含みがあるとすれば……予防線を張りたかったから。
あとの含みは……守りたい思いが、湧いたから。
あの鈴が消えずに在り続ける限りは、虚から狙われる危険に晒される事はない。
紐も、私の今許されたチカラの中で形成したものだが、充分役に立つ代物だ。
護る鈴音と、境界を結ぶ紅紐。
私は千春ちゃんと同様に、渡した。
優しい顔で、家族の話をするその人を。
偶然会っただけなのに……どうしてか、護りたいとそう思ったんだ。
それにしてもーー。
自分と同じ姓の刻まれた墓石へと、目を向ける。
おそらく、石田さんの話ていた"亡くなった友人"とはーーここで静かに眠る人だろう。
記憶の中の部屋に飾らせていた白い花と供えられた物は、だいぶ弱っているが同じだったから。
合点がいったし、再び手を合わせた私は、安らかにと伝えれた。
本当に驚いた。
だけど、その後に目にしてしまったものに、ただただ困惑している自分がいた。
墓誌 石津 実穂 〇〇年3月22日 没
先程墓石を見た時とは比べられない程の心音が、身体に響いた。
手足が痺れて、ぶるぶると次第に震えてきた。
あまりの光景で信じられない思いが心を巣食うのに、震える指はーーそれでも刻まれた名前に手を伸ばそうとしていた。
ふわりと流れた風の中に、朽木副隊長の霊圧を感じた私は、墓誌から目をなんとか逸らして冷や汗を拭う。
行かなければと、待たせてはいけないと思う反面、何も見なかった事にしたかったのかもしれない。
ただ、上官の元へと急いだ。