第8章 鈴音の再会
線香を供えた私の目に、活けてある白い花が見えた。
どことなく、見覚えのある花。
どこでだったかと記憶を頼りに頭を捻っていると、男性の声が聞こえてくる。
「その花が気になるのかな?」
「あ……はい。綺麗だと思って」
「私の他にも、お嬢さんの様にここに来てくれる人がいるんだよ。歳はお嬢さんと変わらない……娘の古い友人だろう。
有難い話だよ、本当に。」
「そうなんですね……」
その言葉を聞きながら、さらに記憶をたどる。
白い花。 一枚の写真。
石田さんから聞いたご友人の方の話。
それらが、線を結んで繋がった。
霧が晴れていくように浮かんだ仮説とは逆に、心はただ驚くばかりで。
まさかと思い、再び白い花を見る為に振り返った私の目は、全く違うものを先に捉えてしまう。
石津家之墓
ドクン!
心臓が、大きく跳ねたのがわかる。
苦しさを感じて、それを抑えたいが為にゴクリと唾を飲む。
足が地面に縫い付けられたみたいに動けなかった。
なんだ………いったい。
解らない。
でも、見てはいけないものの様に思えた。
「お嬢さん………大丈夫かい?」
「あ、はい。大丈夫です!」
声をかけられた事で我に返った私は、目の前の墓石から男性へと慌てて答えた。
帰り支度を済ませたのか、片手に杓を入れたバケツを持って、此方を心配そうに見ていた。