第8章 鈴音の再会
「ありがとう。寒さで手も上手く動かなくて困っていたんだ」
「寒さ…………ですか?」
「ああ。なぜだが空気が嫌に冷たく感じたんだが………歳をとると、そうゆう事は敏感になるのかね」
ふっと笑ったその人は、灰を落とさない様にと手早く線香を握ると、石段を上がって行った。
私の頭の中は、二度目の驚きで一杯になる。
ーーこの人、もしかしたら霊圧知覚が鋭いのかな。
確かに、朽木副隊長が袖の白雪を始解させたのは、霊圧の震えでわかった。
昼間にしてはあり得ないのだが、白い息が僅かに出ている今や、ヒヤリとした空気の温度変化も、その影響であるからだ。
この方は間違いなくただの人間であるにもかかわらず、斬魄刀のチカラによる影響を肌で感じれたーーという事になる。
何もないとは思うが、この方をこれ以上、虚の存在がある場所には近づかせないほうがいい。
と、なればーー。
「まだ少し寒さを感じますか?」
「大丈夫です、ありがとう。
凩に当てられてしまったのかもしれません」
「よかったです。
差し出がましい事ですが……私も供えさせていただけませんか?
袖振り合うも多生の縁と言いますから」
「それは……はい。
家族も喜びます、ありがとう」
余っている線香が見えていたし、お寺とゆう場所柄、それをしようと思ったのだ。
気持ち半分、足留め半分といったところ。
差し出された線香を受け取り、石段を上がった私。
でも、この先ーー。
この行為が、私を苦しめるものになるなんて思いもしなかった。