第8章 鈴音の再会
気配を辿って程なく、探していた人間を見つけた。
初老の男性で、墓参りに訪れていた様だ。
何か有れば私も対処しようと、あたりの霊圧を探っていた時。
風に流されて足元に転がり込んできたクシャクシャの新聞紙を、私は彼に手渡した。
「すまない、急に風が出てきたから飛ばされてしまった。
ありがと………!」
「よろしければお手伝いしま………あれ、貴方は……」
「………」
「あの……?」
「………あ、ああ!驚いてしまって!会うのは2度目ですね。
以前、駅でカードケースを拾ってくれたお嬢さんか。
恐縮だが、お願いしてもいいだろうか?」
大丈夫ですよと笑って見せた私に、男性は笑顔ではあるもののなんとなく、おずおずとしながらライターと紙を手渡した。
様子が気になったものの、そのまま線香に火を灯す。
しかし、本当に驚いた。
偶然とはいえ、また会うなんて。
ただ、落し物を渡し渡されただけの関係だ。
広い町の中で、なんとも稀有な事。