第2章 戸惑いこころ
p.m 22:27
テーブルの置き時計が示す時間は遅い時刻だが、僕はこれから勉強をしようと思う。
買い出しの帰りが思ったより時間がかかって
夕飯も入浴もおそくなってしまったから。
アパートへの近道で交差点を通ろうとしたが、彼女が居たから。
女の子の霊と話す死神姿の彼女。
賑やかに話す様子はなんとなく、姉妹の様にみえた。
でも、僕は回り道をしてその場を後にしたんだ。
気分を変えたくてコーヒーを淹れにいくことにした。
インスタントの粉の量は少し多めに。
コーヒーメーカーの起動音をききながら溜息をついて、思う。
だいたい、勉強しようとしてるのに
どうして思い出したりなんかしたんだか。
出来たてのブラックの香ばしい香りで落ち着いた僕は、テーブルに戻り鞄から教科書を…取り出せなかった。
指先が触れようとして、刹那。
「ありがとうございます、石田さん。
大事に使いますね。」
よぎる言葉 嬉しそうな顔
それらが、幼い頃の彼女と重なる。
教科書に伸びたはずの手は結局、何も掴まずに
そのままソファーにドサっと寝転んだ。
自分から勝手にしといて、とは思うが。
やらなければよかったかもしれない。
思い出してしまえば、彼女なのかと
錯覚してしまう。
僕の眼は、彼女を通して幼き日の石津実穂を
見てしまう。
そして傷つくのは、僕じゃない。
何も知らない、関係ない彼女なんだ。
だから僕は、関わらない。
天井のライトが眩しくて目を瞑る。
横たわってから暫くたつ。
「…………勉強しないと」
当初の目的をしなくてはいけない。
ぬるくなったカップはコーヒーの味も損なわせているだろう。
重たい気持ちをどうにかしたくて、僕はコーヒーを仰ぐ。
酷く、苦い味だった。