第8章 鈴音の再会
千春ちゃんを送りに来ただけだからと断ったのだが、すぐに渡せる物だからと、雪子さんに待ったをかけられた私。
なんだろうと思いながらも、千春ちゃんと二人で待つ事に。
「お兄ちゃん達は元気?」
「うん、変わらずね」
へへっと嬉しそうに綻ぶ千春ちゃんの顔が、私を自然と笑顔にする。
ちりん ちりぃん
優しい音がした
「いい音だね。」
「無くさないように、紐に付けたんだ」
千春ちゃんを魂葬する際、施したままの鈴と組紐があった。
風司には、怒られるかもしれないが……彼女のためだ。
こっちにだって虚はいるからね。
お守りは継続中だ。
それを確認出来てひと安心していた私に、千春ちゃんが懐から首飾りを出した。
覗いてみると、鈴と一緒にそこには花びらが押花として硝子の蓋の中に入っていた。
見覚えのある花弁で、現世を離れる際に千春ちゃんのご両親から貰った花束だったもの。
優しい色合いの花で、確かガーベラだったはず。
そこに、まさか私があげたチューリップの花弁も添えてあるとは思わなかった。
「私の宝物なの!」
その言葉に とびきりの笑顔に
私は胸がいっぱいになった。
安定しない霊圧の不調
不甲斐無く思う心
にじりよる不安
それらを打ち消したくて………まだ自分にも戦う術はあるんだと答えが欲しかった。
最近、心の中がごちゃごちゃしていたからか。
「お姉ちゃん………?」
くぐもって少し苦しそうな千春ちゃんの声がするけど、今は駄目だ。
本当に大事な物なんだと、握りしめる手や、伝わる彼女の思いが………嬉しくて。
この子を、ぎゅっとしたくなったから。