第8章 鈴音の再会
山田三席の尽力で意識と怪我の無い体を取り戻した私は、感謝をしつつ二番隊舎を後にした。
修行のお礼を砕蜂隊長に伝えれば、想像した通りにぶっきらぼうな顔で、いらんと突っぱねられてしまったが、去り際にくしゃりと頭を撫でてくれた手は………優しくて嬉しかった。
今は、山田三席と四番隊舎への道を歩いている。
「本当にもう体は大丈夫なんですか?」
「だって、どこも痛くないですよ!
本当にありがとうございます。急なことで御手を煩わせてしまいました」
「いえ!怪我の治療は大事な仕事ですから、気にしないでくださいっ。
さっき飛んで来た地獄蝶、穿界門の刻限を伝えてましたね。
現世に戻られるんですか?」
「はい、もともとその予定で此方に来ていました。
まだ時間があるので、少し向かいたい場所に行こうかと考えています。」
「ルキアさんや一護さん達はお元気ですか?」
「変わらず元気に…って黒崎さん達と面識があるんですね」
「はい!話せば長いですけど………よく知ってますよ。
そうですかっ!お元気ならよかった。
石津さんも病み上がりですから、気をつけてくださいね」
「……善処します」
分かれの挨拶で、彼の言葉を苦笑いしながら私は歩いた。
もちろん無理はしないつもりだが、今の自分に必要なものを得るためにソウルソサエティへ来たのだ。
それを為し得た今、山田三席の言葉を守りたい反面、いつかは破ってしまうのがわかるから………申し訳ない気持ちもある。
ざりっと舗装中の道を踏みしめた草履の音が聞こえて、足を止める。
此方でゆっくりできる時間も、そう長くはない。
久しぶりに………行こう。
見上げれば、太陽が中天にさして世界を暖かく照らしていた。