第8章 鈴音の再会
「顔を貸せ、大前田。」
「は………痛い‼︎‼︎ なんでいきなり殴るんですか隊長⁉︎」
「此処に来るのが遅いからだ。
おおかた油煎餅でも食べていて、ろくに仕事もしてなかったんだろう。迎えの刻限すら忘れてな。」
「なんでそれを………いやっでもちゃんと救護班の人間は呼んできました!」
修行を始めて、きっかり一刻過ぎた練武場。
そこに慌てて来た大前田と半ば引きずられて現れた小柄な男ー山田花太郎は、事の成り行きをハラハラしながら見ていた。
何故なら、そこら中に鬼道や打撃で穿たれたであろう穴や倒木の山が広がっているからだが、一番の理由は………。
「そっそんなことより早く治療しましょう、砕蜂隊長!
右肩が潰れてしまってるじゃないですか‼︎」
「見た目程酷くはない。それよりも彼奴を診てやってくれ。」
「え…………石津さん?!」
言われるまま視線を向けると、突っ伏し倒れている石津さんの姿があって驚いた。
慌てて近付き診てみると気を失っているだけだが、体には無数の打撃痕。
あまりいい状態ではないのは確かで、僕は裾をたくし上げて縛り、治療の準備に取り掛かる事にする。
「それにしても、お二人共どうしてこんな怪我を………」
「修行をつけてくれと言われてな。成り行きで仕方なくだ」
「隊長の瞬閧で一発!って感じですか⁈」
「阿保か。
痛み分けだ、お互いに………いや。石津にとっては目的は達成したのか」
「どうゆう事ですか?」
「一撃当てなければ現世に戻れないと言っていたからな。彼奴なりに今ある全てをぶつけたが………まだまだ甘い」
言葉は厳しいけど、その音の響きや優しい視線を見た僕は、少し驚いた。
あまりそうゆう…優しさや気遣う事を砕蜂隊長からは見たことがなかったからだろうが、他隊の隊長なら仕方のないことかもしれない。
とにかく今は、石津さんと砕蜂隊長の治療をしなくちゃ!
そうして僕はふっと深呼吸をして、両手に霊圧を込めた。