第8章 鈴音の再会
「時間通りだな、石津。
よし、後は任せるぞ大前田」
「うぇ?!またですか?
ここんとこずっとじゃないですか隊長ぅ…」
「総隊長の命だぞ。
それに、文句を垂れるなら副隊長ともあろう貴様が………元とは言え席官に瞬殺された事に私は頭が痛いがなぁ」
「………………いや、あの…スイマセン」
ものすごく泣きそうな顔した大前田副隊長の姿に、私的な事で貴重な時間を頂く事に心苦しいとは思った………けど、砕蜂隊長の更に怖い顔を見てしまうと、何も言えなくなってしまう。
と言うか、口を挟める空気じゃなかった方が事実だ。
申し訳ありません………大前田副隊長!
私は再度、両隊長に改めてお願いをして目的を果たすために動き出す事にした。
二番隊舎内 南東部 第三練武場。
この練武場は、他隊の隊舎にあるような道場と同じく日々隊士が稽古をするのだが、四方三里を野山に囲まれた全てがそれにあたる為
隠密機動の隊士育成にもあてがわれている。
白打と歩法を得意とする隊士が多い二番隊では、この地形を活かして錬磨に磨きをかけるのだ。
ここ数日の私と砕蜂隊長との修行で、だいぶ樹木が倒され拓けてしまった土地に足をつける。
「行くぞ。時間は余りかけてはやれん。
一刻だ。
それまでに、拳のひとつでも当ててみせろ石津!」
「はい、よろしくお願いします!
出来なければ現世に戻れませんから、絶対やります!」
二つの影が吹き抜けた風の音に紛れて消えた。
力強く踏み込んで形取られた足形だけを残して。