第7章 その日 口火を切る
夜風がさらりと吹く、大橋の歩道に佇む人物を見て、私は驚いて声を上げた。
「井上さん!じゃ、待たせてる人って………」
「こんばんは、石津さん!
久しぶりだね、朽木さん! 連絡ありがとうございます」
「私も久しぶりに井上の顔が見たくなって、3人で話そうと思ったのだ。
お前には、井上の言葉も必要だと思ったからな」
ニコニコと微笑む井上さんと、肩を竦めてはにかむルキアさんの顔を交互に見やる。
何度目かの俯きのあと、ぽつりと私はこぼす。
「本当に、ルキアさんはすごいなぁ…」
わかってたんだ、この人は。
私がたくさんの言葉を必要としている事を。
井上さんになら、私もルキアさん同様に素直に話せる事を。
柔らかくて温かい、包み込んでくれる井上さん。
この人は、親身になって必ず聞いてくれるから。
ルキアさんがそっとそばにいてくれる方なら、井上さんは優しく手を引いてくれる方だ。
私は、顔を上げて真っ直ぐに2人を見つめながら改めて言葉にする。
「ちょっと長くなりますけど、よろしくお願いします。話、聞いてほしいんです」
「まかせて‼︎どんとこいだよっ!」
「………ああ」
橋に寄りかかりながら、小さな夜のお茶会が始まる。
「たつきちゃん家からの帰りにコンビニ寄って買ったんだ。朽木さんどうぞ!」
「こ、これはっ………うさピーチ!
幻の飲料ではないか‼︎
苺の味が炭酸とよく合わさり、爽やかなのだ!
つぶらな瞳に、飲み口をうさ耳をデザインとして作ったペットボトルの可愛さたるや………ありがとう、井上‼︎」
「喜んでもらえてよかった!
私はレモンサンダーティだよっ」
「もはやよくわからないのですが………」
「石津さんには、こちらをどうぞっ」
「ありがとうございま…………………ブラックチョコーヒー?
甘いんですか?苦いんですか?
と言うか、それどうやって飲むんですかルキアさん?」
「「いただきます!」」
「…………………いただきます」