第7章 その日 口火を切る
自分の気持ちを言葉にしたくても、出来ずに俯いていた。
「出るぞ、実穂。着替えて店前に来い」
「はい………………え?」
パシャリと水音がすればルキアさんは湯船から既に上がっていたが、言われた言葉に疑問が湧いた。
「どうしてでって………ルキアさん!」
「いいから、来るのだぞ」
訳がわからないままだったけれど、身支度を整えに部屋へと急いだ。
浦原さんに許可を取って、再び外へと出る。
雨は上がっていたが、依然と空気は冷んやりしていて湯冷めしないか内心不安はあった。
無言のままルキアさんの後を着いて行けば、
川沿いの大橋に辿り着く道を歩いているのだと気付く。
「あの…ルキアさん?」
「もうすぐ着く。人を待たせているから急ぐぞ」
「………わかりました」
さらりと髪をなでた夜風に、雨の匂いが香る。
月明かりから延びる自身の影を、ぼんやりと見ながら歩く。
ルキアさんの事は信頼しているし、考えあっての事だとわかる………けれど。
ただただ疑問しか頭に浮かばずにはいられない、今の状況。
…………さきほどの湯殿で、気持ちの不完全燃焼がちらつく。
心が重く感じて、思わず出てしまった溜息にさらに嫌気が差してくる始末。
でも、ルキアさんに着いて行けば“何か“ある筈だ。
だから、今は歩こう。
やがてたどり着いた大橋の歩道に、私は意外な人物を目にしたのだった。