第7章 その日 口火を切る
番傘を握りつつ、思い出した事を彼女に告げる。
「ずっと言えなかったんだけど、あの雨の日に傘を貸してくれて………ありがとう」
「え…………」
ぱちくり、と目が向くが、苦笑いながらも気を取り直して言葉にする。
「機会を………自分からあの日の事を持ち出すのが、自分勝手だけど………こわくて。
言うのがこんなにも遅くなってごめん。
悪いなって思っていたし、結局傘は使わなかったんだけど石津さんの気持ちは有り難かったから、ちゃんと伝えなきゃって」
「あれは………そのっ…私が勝手にしたことですから、全然気にしなくてもいいんです!」
「それでも、言いたくなったんだ。
………あっこれも僕の勝手にしたことだね」
伝えたいことは、逸らさずにちゃんと言いたかった。
あの時も、そして今日も石津さんには感謝をいくら言っても足りないのだから。
そして戯けたように笑えば、彼女は言葉に詰まった顔をしてーーなんと赤くなってしまった。
まさかそんな反応がくるとは…。
何か変な事を言ったのかと、こちらまで気恥ずかしくなってしまう。
雨の所為で寒いはずなのに、頬が熱いように感じるのは気のせいだと思いたい。