第7章 その日 口火を切る
昼間の時間から4時間は経っているにもかかわらず、雨脚は朽木副隊長から聞いた通り強くなっていた。
加えて、12月の日がとっぷりと沈んだ夜では寒さも増して、身に堪える。
目線を上に向ければ、黒い番傘が曇り空と雨を隠してくれていた。
隣を歩く石田さんは、ビニール傘をさしているのだが、小さな疑問が胸に浮かんだ。
「あの…石田さん、この傘はもしかして?」
「浦原さんのだよ。
貸してくださったんだけど、なかなか機会がなくて返せていなかったんだ。
悪いとは思ったけど石津さんが濡れなくてすむし、一石二鳥だね」
「確かに助かってますね!………ありがとうございます」
ぽりぽりと顔を掻いて、乾いた笑みをこちらに向けた彼に、私はそう言葉にして同じように笑い返した。
少し先を歩く後ろ姿を、ちらりと傘の合間から見やる。
石田さんなりに、気を遣ってくれたんだろうと思う。
こうやってわざわざ商店まで送ってくれるのも、彼らしい優しさなのだろう。
有り難さもあるが、今は別の思いが私の心に引っかかっている。
石田さんとの話のことだ。