第7章 その日 口火を切る
「それは………違うと思いますっ」
鼻を啜りながら、しかし凛とした石津さんの声が耳に響いた。
ピクリと体は反応したけれど、預けていた頭をそのままに石津さんの言葉を待った。
「ご両親や師匠は、石田さんの心配かけたくない気持ちや本当は泣きたかった気持ちを………わかっていたんじゃないですか?
そして、それごと信じていたんだと思います。
石田さんの向けた心が、その方々を思いやってくれた故にした事だと………苦しいくらいに伝わったはずです。
だから、より愛する気持ちはあっても………傷付くなんて事は、ないと思います」
石津さんが、どんな表情をしてるのかわからない。
その言葉は、真っ直ぐーー僕の心を吹き抜けていった。
ああ どうしよう
また 溢れてしまう
どうして君は………僕が知らずに、けれどずっと求めていた言葉をくれるんだろう。
今も苦しくて痛くて、自分ではどうにもならない気持ちだけど。
湧き出る不安や弱さを、春風みたいに優しく駆けて、胸の中の冷たさはゆっくりほぐれてあたたかくなっていく。
優しく響いた石津さんの言葉が、心地良くて。
もう少しだけーーこのままで。
そう、思ってしまった。
突然の機械音が、部屋の中で鳴り響くまでは。