第7章 その日 口火を切る
師匠との鍛錬を終えた帰り道を、二人で歩いていた。
いつもはよく話してくれる彼女が、今日は不思議と静かで。
気になったぼくは、少し後ろを歩く彼女に目を向ける。
立ち止まっていた姿にますます疑問が浮かんで、彼女のもとへと小走りで戻ることにした。
『どうかした?具合でも悪いの?』
『ううん、ちがうの。だいじょうぶだよ。
………石田くんは道徳の宿題おわった?』
『え………うん、もう少しかな。
確か、"わたしと友達"の本の感想文提出だよね?』
『そっか………作文用紙2枚なんて長いよね〜。やんなっちゃうなぁ!』
一瞬だけ、表情が陰ったようにみえた。
でもすぐにため息混じりで、そう口にした彼女はいつもの元気な声で言うから。
胸の中にさっきよりも強く感じた疑問を、ぼくはそのままにした。
あんまり聞いても、嫌がるかもしれないと思ったから。
何日かして、もっと元気のない彼女を見たぼくは、ようやく口を開いた。
そうしたら、作文がどうしても書けなくて悩んでる事を知ったんだ。
「彼女は引っ越し続きて、ひと所に長くいたことがなかったから……友達がどうゆうものかわからないって悩んでた。
意味を辞書で調べて、益々書けなくなったともこぼしていたんだ」
「どんな意味があるんですか?」
「 互いに心を許し合って、対等な関係でいる事 」
「………………!」
「仲良くなりたい・そんな存在がほしいと願っても、どうにもならない現実の前に、自分ではとても手に入らないものだと、彼女は言った」
その時の彼女の淋しそうな顔は、ズキリと心に傷を残した。
ぼくが悩んだ時に滅却師としての道を示してくれた彼女が、いつもクラスで元気にはしゃぐ彼女がーー目の前で悩んでいる。
ぼくは どう答えたらいい?
あれ? でも
ぼくは 彼女と一緒に過ごしてる
それはすごく 楽しくて
彼女の笑顔も たくさん目にした
つまり ぼくたちはーー
彼女が手にしたいと願う
"友達"になれているんじゃないだろうか
もし彼女自身は、まだそんな関係になれていないと思うならーーぼくがなりたい。
その思いが、あふれて。
隣にいる彼女に、伝えたいと思った。