第7章 その日 口火を切る
『石田くんは、毎日あの人の所にいるけど、どうしてなの?』
『ぼくは………師匠みたいにつよい滅却師になりたいんだ。
チカラがあっても使えなきゃ、困ってる人をたすける事もできないから………わっ?!』
いきなりグンっと引き戻された体に驚いた僕は、首だけ捻って後ろを見た。
そしたら、服の裾を両手でギュッと握って、ムッとした顔の彼女と目があう。
『………………………そんなことないよ』
『え………?』
『わたしの手をにぎって、走ってくれた。あの時、すごくこわかったの。
でも石田くんがきてくれたから、こわくなくなったよ。
正義のヒーローみたいだった!』
『………………!』
『たすけてくれて、ありがとう!』
さっきまでの曇り顔からにぱっと笑うその顔が、言葉が、頭から離れなくて。
『っせ、師匠にお茶………届けてくる!』
『いってらっしゃ〜い♪』
ひらひら手をふって送り出してくれた彼女の声を聞きながら、ぼくは弾む足で走った。
顔が熱い気がする。
でも なんだろう うれしいや
『………………へへっ』
ただ見ている事しか出来ない自分が嫌で、師匠のもとに通った。
今の自分には、何もできないと思っていたから。
だけど、そうじゃなかった。
無我夢中だったあの時。
こんなぼくにも、チカラが上手く扱えなくても出来る事があったんだ。
やることに意味があるのだと、それを知れた喜び。
そして彼女の笑顔と感謝の言葉が、心をほんわかとあたたかくしてくれた。
昨日まで暗かった世界が、優しく色付くみたいだ。
『お茶を持ってきました、師匠!』
『わざわざありがとう、雨竜。おや………良い事があったのかな?』
『………………はいっ。ぼくが目指す滅却師に、一歩ちかづけたような気がします』
『それはいい。
雨竜が信じるものを、大事にしなさい。
どれ、ヒーローになるならぴったりの衣装をプレゼントしなくては!』
『師匠のデザインは…その、はずかしいのでちがうものがいいです。マントもなしで』
『………………………………せめて十字模様は入れてくれると、わしゃうれしいのう』