第7章 その日 口火を切る
僕が気付かなかった傷は、彼女の手によって治された。
本当にたいした傷では無かったけれど、石津さんの言葉は尤もだったし、厚意に甘えてしまう。
治癒された後の名残なのか、ほんのりと温かい指をきゅっと握って、僕は真剣な顔で彼女に聞いてみた。
「どうしてそこまで、気にするんだい?」
「え………………?」
「誰かが傷付く事を………なんて言うか、恐れてるように見えるから。
それなのに石津さん自身が怪我をするのは、厭わないって感じだ」
「………………………」
ずっと、気になっていたんだ。
どれだけ傷を負ってもなお身を挺して戦う姿や、モネさんが井上さんを庇って怪我をした時の異様な程に焦る姿。
辿り着いた仮説は、石津さんは''誰かが怪我を負う"ということを恐れているのではないか。
其れこそ、トラウマになりかねない程に。
そんな時のすごく辛そうな顔を、僕は見たくなくて。
少しでも傷みがあるなら、無くしてあげたいと思ったんだ。
僕も自分の話をしたかったのは勿論だが、この話も彼女から聞きたかった。
ただ、あくまで話してくれたらの事だけれど。
「無理に聞くつもりはないけど、僕が気になったから………知りたいんだ。
辛い表情の理由を」
驚きを映した瞳を見つめていると、少し揺れて。
どこか迷いも同時にある様だ。
踏み込んだ話をしてるのだから当たり前なのだが、申し訳なくも思う。
「ごめん………やっぱり「話します……」
「………!」
「話します、石田さんに。………長くなりますけど、私も聞いてほしいです。でも、いい話じゃないですよ?」
静かにそう言葉にした彼女は、僕に話してくれた。