第7章 その日 口火を切る
勢いのままに商店を飛び出した私だったが、今は心も落ち着いた。
約束の時刻には余裕があるし、何より周りの景色がそうさせてくれたのだ。
千春ちゃんと過ごした、あの銀杏の大木を見たり、駅前の何気ない人の流れを見るのが私は好きだったりする。
だからなのか、今日もつい足がそちらに向いてしまう。
待ち合わせの公園は、駅の裏手にあるため改札前を通り過ぎれば近道なのだと、井上さんとのお出かけで知った。
だから今は駅前広場の時計柱の足元でぽつりとしながら、道行く人々を見ていた。
子供を連れて楽しそうに笑う家族。
待ち人顔の女の子。
急いで走り去るスーツの男性。
十人十色な景色は、この空座町にたくさんの人が住んでいる事を、改めて私に教えてくれる。
それを知る事で、私は死神としての自分の成すべき事を強く心に刻むのだ。
人が居れば、それだけ霊もいる。
虚を斬ることは、そのどちらをも護ることに繋がる。
そして虚となった魂も、共に救えたらいい。
1人ではなく、みなさんと一緒に。
そう………私は思う。