第7章 その日 口火を切る
頭の中が酷く痛い。
逃げ出してしまいたい衝動に駆られたが、
それは出来ないだろう事もわかる。
「今のお前の顔といい………
今度は関係ないとは言わせねぇぞっ!」
「………………………」
「答えろよっ石田‼︎」
「僕は言ったはずだ………黒崎」
「あ?なんの事………」
「そんなに簡単な事じゃないとね」
「…………………意味わかんねーよっ!」
やるせない思いが、黒崎の強く握られた拳から言葉から感じられた。
それでも、僕が言ったことは事実なんだろう。
放課後に黒崎に呼び出されて話した、あの日。
屋上から去ったはずの黒崎の気配は、隙間が空いた扉一枚を隔てた所にあったのだ。
『そんなに簡単じゃ無いんだよ、黒崎』
この言葉はきっと黒崎にも聞こえていた。
だから、口にしたとも言えるけれど。
まるで、その事を思い出したかの様に
黒崎の瞳は大きく見開かれた。
「今ので………俺が、はいそうですかで納得すると思うのか?」
「その様子じゃ、違うだろうね」
「当たり前だろ!」
こうなってしまった黒崎は、きっと納得するまで動かないだろう。
カチャリと眼鏡を直して、僕は口を開いた。
「あまり時間はかけれないし、いい話じゃない。
それでも………聞くかい?」
無言で鋭い瞳を向ける黒崎に、僕はその答えを肯定と受け取る。
まさか彼女より先に話す存在が、こんな形で現れるなんて思わなかった。
しかし、腹を括る事には変わらない。
ちらりと腕時計を見る。
約束の時間まで、あと2時間32分。