第7章 その日 口火を切る
「なんで君が………」
「いろいろあって来れてなかった………おふくろの墓参りだよ」
ガリガリと頭を掻いて、でも珍しく素直に答えた黒崎だったが、それを聞いてしまえば、こちらは何も言えなくなる。
「お前は…………」
「君には関係ない事だ。僕はもう行く」
「そうかよ………」
ムッとした顔の黒崎が見えるが、今はそれどころじゃない。
言えるはずもない。
ましてや見られる訳にはいかない。
幸い黒崎は、僕がどの墓石の前に居たかを見ていないはずだ。
心の動揺を消す様に、眼鏡のブリッジを直して黒崎の横を通り過ぎる。
「………………なあ、石田。ひとつ聞いていいか」
「………なんだい?」
「ここに石津と同じ名前があるのは………なんでだ?」
「………………………!」
大丈夫だと安堵したのも束の間に、言われた事の衝撃で思わず振り返ってしまう。
どうゆう事だと、信じられないと、黒崎の鋭い瞳が物語っていた。
あまりのことに、すぐに黒崎も口が動かなかったんだろう。
そんな姿をみた僕は、ただ口を噤む事しか出来なかった。