第7章 その日 口火を切る
空座町を見下ろせる場所にあるこの寺は、かなり敷地が広く小さな林道を通ってその中を行き来する。
町で1番大きな寺だけはある。
立ち並ぶ墓石の道をひたすら歩いて、今は枝木の大きな桜の木が植わっている一角のひとつ。
そこに、彼女はいる。
石津家之墓
荷物を脇に置いて、借りてきたバケツと布を手につかむ。
綺麗に手入れがされてはいたが、雨風の汚れを払い花も活けたかったのだ。
ひと通りの汚れを落として、ジニアの花を花受けに活ける。
不意に、法名碑に刻まれた死神の彼女と同じ名前が目に付き、心臓が嫌な音をたてた。
石津さんは彼女ではないんだ
違う
ここにいるのは 僕の大事な友なのだから
そう心に言い聞かせて深呼吸をした後に、
改めて僕は、彼女と向き合う。
手を合わせ、瞳を閉じて。
言葉を紡ぐ。