第7章 その日 口火を切る
am 8:47
今日は12月にしては、暖かい日だ。
渇いた冬の風は少し冷たいけれど、降り注ぐ陽光がそれを和らげてくれる。
それでもやはり、コートは必要で。
グリーンのチェックシャツに紺のカーディガン、ブラウンのボトムスを着て、最後に羽織る。
昨日買っておいた花束を携えて、僕はアパートを出た。
白いジニアの花束。
季節も終わりになってしまったこの花を探すのは大変かと心配していたが、いつも行く花屋のスタッフのおかげで、安心だった。
年に数回とは言え、毎回同じ花束を買って行く人の事をしっかりと覚えていた事には、驚き以上に有り難い気持ちが大きい。
朝も早い時間では、すれ違う人は少ない。
休日となれば尚更かもしれないが。
町内を歩き車道を離れて、坂道を登る。
にわかに感じる汗が気持ち悪いけれど、歩く足は歩みを続ける。
ライターに線香、そして花束。
向かう先は、友が眠る場所。
大事な思い出の中の彼女と話をするために、今日はそこへ行こうと決めていた。
僅かな時間の中ではあるが、報告と許しを乞うために。