第6章 手をのばすは夢の中
浦原商店には、地下深くに広大な空間がある。
名は、地下勉強部屋。
それは大地が広がり、変わらない空の景色がひたすらに続く、大きな箱庭の様なものだ。
たくさんの者が修行と称して戦い、己が力を磨いている場所である。
かくゆう彼女も、その一人。
鳴り響く激しい鍔迫り合いの音。
揺れる大地に、風が轟々と騒いで荒れ狂う。
深夜に始めた斬り結びは、二刻を過ぎても終わらず。
興がのった2人は、傷付きながらも刃を交えた。
それを、少し離れた場所から見守る影が。
店主の喜助と握菱鉄裁である。
「石津さんには脱帽っスね。あれだけの毒に魂魄自体が晒されて、霊圧も摩耗してるのにも関わらず動けるんだから」
「しかし、あのままでは…」
「治るものも治らないでしょうね。さぁて、そろそろ止めさせて湯に浸かってもらいましょ!
はいはーい、お疲れ様です石津さーん!」
ぱんぱんと手を打ち鳴らしながら声をかけて、彼女に休息を取るように促した。
戦いの嵐の中でも気配を察した様で、
具象化を解いて斬魄刀を鞘に納めた彼女は、小走りで此方に寄ってきた。
「………浦原さん。もう朝ですか?」
「あと4時間すればですね。
ささ!お楽しみ中ですが、ちゃんと休むのも今の石津さんの仕事っス。
あちらに湯が沸いてますから、入り直してはいかがです?」
「いつの間にかそんな時間なんですね。………すいません、言われた通り休まなくて」
「いやあ、いい戦いっぷりでしたね!
久しぶりなら仕方ないでしょう。今からでも体を休めればいいんだ」
「いいんですか?」
「疲れを取るために頑張って作った温泉ですから、是非!
………なんなら大サービスで、お背中流しますよ?」
「結構です………!」
汗まみれに切り傷まみれの彼女は、茶化した台詞に焦りながら返事をして、その場を後にした。
どうやらこのまま、温泉に入るらしい。
「まったく………強制的に休まなくちゃいけないほど疲れがきてるの、わかってる筈なんですがね。………いけない人だ」
仕方がないと溜息をついて、地上の店へと鉄裁と戻る。
彼女には、ゆっくりする時間が必要だろうから。