第6章 手をのばすは夢の中
「………頭をあげてよ」
その言葉に、なんて言われるか分からない不安を感じながらも、ゆっくりと顔上げて石田さんを見つめる。
「僕が、思う事を話すね」
「………はい」
一度瞳を閉じた彼は、直ぐに目を開けて話してくれた。
「夕方の事は、君も僕も最善を尽くした末の戦いだった。違うかい?」
「………はい」
「あのまま行けば、お互いジリ貧になって潰れてしまう。
それを防ごうと君は考えたんだろう」
「どうして………」
「わかるのかって?以前石津さんの戦闘を見て、無駄な事はしない人なんだって知ったからね。その辺は、黒崎とは大違いだよ」
「そ、そうなんですか…」
そんなこと聞いた彼はきっと怒るだろうと思いながら、話の本筋は石田さんによって戻された。
「とにかく!僕も同じ事を考えていて、でも石津さんが動くのが先だっただけだよ。
……僕は、それを悔いてるけどね」
その言葉の音は小さくともはっきり耳に届いて、彼自身を責めている強い音がした。
「僕の事を気にしてくれてありがとう。
だけど、君に怪我をさせてしまった。
痛い思いも、怖い思いだって沢山したはずだよ。
いつだって怪我をするのは、僕より石津さんだ。
だから君には、あれ以上怪我なんてして欲しくなかったんだ」
「それに………あの事と今日の事は違う物事だ。
考えてる暇なんてないよ。
あの時は…ただ必死で。
今思い出すとね………君が夢を見たと言うなら、あの時僕も悪夢を見ているみたいだった。
目の前の石津さんを僕は助けたかった、それだけだよ。」
「だからね。嫌な思いなんてしてない。
………むしろ心配したんだ」