第6章 手をのばすは夢の中
道路で立ち話は良くないと、近くの公園に足を伸ばした。
小さなベンチに腰を下ろして、彼女の話を聞いてみた。
「………え?庭園に行こうとしていたの?」
「はい。無くし物をしてしまったんです」
「やっぱりね。それって、これかい?」
「………やっぱり?」
僕の言葉に不思議そうな顔をしていたけれど、ポケットから取り出した千切れてしまった水色の結い紐を取り出して見せた。
擦り切れて、かなりぼろぼろになった紐を手にした彼女は、それでもすごく安心した顔をする。
「そうですっ………!良かった!
石田さんが見つけてくれたんですか?」
「いや、井上さんだよ。僕は頼まれて渡しに来たんだ。入れ違わなくてよかったけどね」
「井上さんが………。ちゃんとお礼します!
でも、石田さんもありがとうございます」
「いや、たいした事したわけじゃないから」
その言葉を最後に、僕らの会話は途切れる。
流れる空気は嫌なものではなくて、ただなんとなく、静かな時間を感じていたくて。
少し冷たい夜風が吹いた。
人1人分空いた距離に座る石津さんは寒くないだろうかと、隣を見やる。
すると、彼女も此方を見ていて。
少しだけ、ドキリとした。
「………石田さん、少しお話をしてもいいですか?」
「僕は構わないけど、時間とか浦原さん達が心配しないかい?」
「連絡して聞いてみます。待っててください」
そう言って席を立ち、スマホを取り出した彼女は少し離れて電話をしていた。
その様子を暫く見ている。
話なんて、なんだろう?そう思っていたら、不意にメッセージの音がポケットから聞こえた。
ばちんと開いた折り畳み式の携帯は、浦原さんから頂いた連絡用のもので。
普段こない人からのメッセージで、ますます困惑していたが、とりあえず開いて読んでみた。
ガッチャン‼︎
「ど、どうしたんですか…石田さん?」
「いや………何でもないよ。気にしないで!」
「………携帯取り落としてますよ?」
「本当に大丈夫だから!!!」
To 石田さん
夕方の事は理由があるんで仕方ないですが、それ以外では、駄目っスよ〜?